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結婚してもう三四年になるが、いまだに出たり入つたりを繰り返している茂子は、練吉にとつては三度目の妻だつた。最初のは男の子を一人のこして去つた。二度目は半年もたゝないうちに大石の方から帰した。今度の茂子の場合だつて、当人も居辛からうが、大石の側でも面白くはない、どうでもいゝと云つた調子であつた。そして、ふしぎなことにはかういふ態度は大石の正文老夫婦から出ているので、練吉の方は吾不関焉われくわんせずえんといつた風があることだつた。
「あれは何でせう、知吉さんといふ人は悪く云ふと娘をひつかけて相沢の家に入りこんだやうなもんでせう」
「あゝ、よからう。大賛成ですよ」
「いつこちらへお帰りでしたか」
「へえ。――わし達は小倉組の者ですが、ちよつと怪我人ができましたよつて、せんせいに御面倒かけに上つたんですが」
「ふうん、潰れるだらうな」
と、その小柄な身体から出るとはとても思へない、幅のある、濁だみ声で云つた。
と、小谷は人差指と中指を二本突き出して見せて、
「ね、大石さん。今夜一つ私のところで慰労宴をやらうといふんですがね。あなたもぜひどうですか。この三人だけでね」
「お忘れかもしれませんが、高間道平の息子でございます。――今度、医者としてこの町へ戻りました者で――」
ふと気づくと、玄関に人が立つていた、半シャツの男だ。瞬間、又来たな、と思つた。
「ふん。何でもありやせんよ。大方、腹でも痛かつたんだらう」
徳次はいつのまにか腕組みをしていた。あのあてずつぽうな、そゝつかしい、力りきんだ様子が現れていた。