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「おい、お茶を入れてくれ」
突然だつたので、房一は思はずその醜い顔に紅味をうかべながら、軽く頭を下げた。その拍子にごく自然に眼玉と真向ひになる位置を外した房一は、さつきから気を引かれていた馬の方をちよいちよい眺めやつた。
義母は明日も片づけ仕事が残つているので泊つて行くことになつた。
「さつき、はじめは、はてな、見慣れない男がいるな、と思つたくらいですからな」
「ひどい傷だねえ!」
「いや、それが――」
このポインタアの雑種は、房一の往診にはどこへでもついて来た。いゝ路づれだつた。
小谷は酔つて来たのだらう、何度も同じ手真似をして見せた。
その当時は差したることでもないように思っていたが、翌年の春になっても痛みが本当に去らない。それが打身のようになって、暑さ寒さに崇たたられては困るというので、支配頭の許可を得て、箱根の温泉で一ヵ月ばかり療養することになったのである。旗本といっても小身しょうしんであるから、伊助という仲間ちゅうげんひとりを連れて出た。
二人はなほ専門的なことを二三話し合つた。それから、どちらからともなく自転車に乗つた。ペタルに足をかけるときに、突然、練吉は心に浮かんだことを押へかねて、叫んだ。
読経がはじまつた。皆話をやめてその方を向いて坐り直した。
房一は前の方を向いたまゝだつた。
出て来たのは紅い手をした看護婦だつた。台所の方へ行つて何やらまごまごし、しばらく立つてから、